ESG投資とは
2006年、国連環境計画・金融イニチアチブ(UNEP FI)と国連グローバル・コンパクトによって策定された責任投資原則PRI(Principles for Responsible Investment)は、投資機関に対して投資分析と意思決定に、財務指標だけでなくEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)に関する指標も織り込むことを提唱しました。
PRI対象の投資機関とは、年金基金、基金、財団、保険会社、開発金融機関、アセットマネージャーなどの機関投資家ならびに投資顧問、サステナビリティ/財務コンサルタント、保証提供機関、格付機関、議決権代理行使会社および証券取引所など投資家にサービスを提供する事業者です。
PRIに賛同する署名機関は2019年頃から急増しており、2023年3月31日現在、5,391(4,841の投資機関、550のサービス提供者)の機関がPRIに署名しています。そのうち日本の署名機関数は139で、トップのアメリカ1,007やUK&アイルランドの819と比較すると、まだ少ない数字にとどまっています。
現時点での署名機関の運用資産の総額はまだ公開されていないので不明ですが、2021年時点での署名機関3,826機関による総運用資産は、121兆3,000億ドルでした(2021年の公開データに基づく)。
出典:PRIウェブサイト PRI Annual Report 2023 Responsible investment ecosystems Responsible investment ecosystems | PRI Web Page | PRI (unpri.org)
ESGとは
具体的に企業のESGの指標にはどんなものがあるのでしょう。PRIはESGの要因の例は無数にある、と説きつつ以下のような例を挙げています。
E:環境
気候変動、資源の枯渇、廃棄物、汚染、森林減少
S:社会
人権、現代奴隷制、児童労働、従業員関係
G:ガバナンス
贈賄及び腐敗、役員報酬、取締役会/理事会の多様性および構成、ロビー活動および政治献金、税務戦略
出典:PRIアニュアルレポート2021 (日本語版) PRI発行 責任投資とは何か? P.4 download (unpri.org)
これらの課題を経営戦略に織り込んでいる企業はサステナビリティ(持続可能性)が高く、長期投資に耐え、また、このような企業に積極的に長期投資をすることによって市場のサステナビリティを創出し、すべての人々にとってより豊かな世界に貢献することを呼びかけています。
日本では2015年に日本の公的年金の財源の運用を行っているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、PRIに署名した2015年頃よりESG投資が注目され始めました。前述の通り、まだ日本の投資機関のPRI署名が広がっていないとはいえ、近年のカーボンニュートラルの大きな波と相まって、現在、プライム企業の間でESG格付けの競争が起きています。
参考:PRIウェブページ Signatory profile GPIFのページ GPIF | Signatory profile | PRI (unpri.org)
参考:GPIFウェブページ 年金積立金管理運用独立行政法人 (gpif.go.jp)
ESG評価機関と企業の情報公開
投資機関のESG投資の高まりとともに、投資機関へ企業のESG指数を提供する評価機関も増えてきました。ESG評価機関の評価ポイントは、ESG関連の指標に対する企業の努力とその情報の透明性(公開度)です。評価機関は業界別にESGに関する指標をそれぞれに設定し、企業のウェブサイトやサステナビリティ・レポート、統合報告書、その他年次で更新される公開資料を基に、各指標が満たされているかを分析し、格付けします。その格付けは投資機関の意思決定に活用されます。
評価機関の中には企業が情報公開したものを単に評価するだけなく、企業にさらなる公開を促すようフレームワーク化された質問書を直接送付する評価機関もあります(S&P Gold、CDPなど)。
例えば、投資家が企業を判断のするために、企業に求める公開基準やイニシアチブにはGRI、TCFD、SASBなどがありますが、それらには強制力がありません。評価機関は評価指標にそれらを組み入れることによって、企業の公開を促す機能も果たしています。
各企業が各評価機関の指標を満たすように一斉に改善し、公表努力をすると、差別化できなくなり、評価機関は格付けが難しくなります。そうなると、評価機関は新しい指標を策定し、企業を測ります。そしてまた、企業はその指標をクリアするように努力します。評価機関は単に投資機関に格付け情報を与えるだけはなく、このようにして企業のサステナビリティを鍛えていく側面があります。
またESG評価機関には、イギリスのFTSE、CDP(環境分野のみ)、アメリカのMSCI、S&P Global、Sustainalyticsなど、海外の評価機関が多いため、たとえば日本の会社法と合致しないガバナンスの企業組織の指標や、社会的分野の人種やジェンダーなどの指標の理解には国際的な視点が必要です。さらに世界の動向、企業が引き起こす事件などによって、その評価指標が常に変化することもESG評価の特徴です。
ESG投資の中小企業への影響
ESG評価機関の中には大企業のサプライチェーン(Tier1、またはTier2以下)に対する管理状況の公開も指標としている機関もあります。
たとえば、Tier1から配給される部品に関するGHG排出量、有害物質に関するデータ、紛争鉱物含有の有無、さらにTier1、Tier 2における労働環境や人権などの状況を管理するガバナンス体制があるかどうかなども問われています。そのため、大企業は様々な方法でTier1、時にはTier2へのモニタリングを試みています。
また、大企業のTier1、Tier2へのESG関連のモニタリングはGHG排出量などの環境指標だけでなく、雇用者の人権など社会的指標へも広がっています
