着手の順番

排出量の算定はどの基準に沿って行えばよいのでしょう。排出量の算定の基準は、国際的な算定報告基準「GHGプロトロル事業者排出量算定報告基準」(以下、GHGプロトコルと表記)と、日本の省エネ法・温対法に準拠し、日本国内での排出量把握に限定している「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」(以下、SHK制度と表記)があります。SHK制度での算定方法はGHGプロトコルに準拠してはいますが、同一ではありません。

そこで、参考にしたいのが、GHGプロトコルと日本の「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」(SHK制度)との違いを示しつつ、算出方法の考え方を詳しく解説した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」です。また、詳しい算定方法は「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に説明されています。

スコープ(Scope=範囲)1、スコープ2,スコープ3とは、GHGプロトロルが下記のように定義している概念です。スコープ1とスコープ2の算出から初めてみましょう。

出典:サプライチェーン排出量全般 | グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 環境省 (env.go.jp)

スコープ1:事業者自ら燃料の燃焼や、工業プロセスに伴って排出する直接排出を指します。

スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気などのエネルギー使用に伴う間接排出を指します。

スコープ3:事業者の活動に関連するその他(Scope1、2以外)の間接排出を指します。

参考:GHGプロトコル 事業者排出量算定基準 改訂版 日本語訳  

参考:環境省 経済産業省 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン ver.2.6」  2024年3月改訂

算定を始める前に確認したいこと

1.算定の目的

何のために算定をするのか目的をきめます。もちろん、2050年に向かってカーボンニュートラルに向けて、排出量の削減をするのは共通の目的ですが、具体的な目的を考えてみましょう。

どこを重点的に削減するのか削減対象を検討するため、従業員の意識向上のため、補助金などのサポートを受けるため、J-クレジット創出のためのベースラインのデータとして使うため、サステナビリティ・リンク・ローンなどのローンを組むため、SBT取得のため、CDPに回答するためなど、現在、そして将来直面しそうな状況を考えて、なるべく多くの目的を挙げてみましょう。

同時にその目的をカバーするために必要な算定基準の種類も調べてみましょう。目的によっては、GHGプロトコルに準拠した算定か、国内のSHK制度に準拠した算定か、予め必要な算定方法が決められている場合があります。

2. 算定対象範囲

GHGプロトコルでは、自社の範囲を出資比率か、財務支配力で決めることが求められます。財務支配力を選択する場合、財務的に100%支配している連結子会社の排出も算定に含めるようにします。SHK制度に準拠した算定をする場合は国内の事業所のみが対象となります。

また、GHGプロトコルで、GHGガスと定められている7ガス(CO2, CH4, N2O, HFC, PFC, SF6, NF3)の、どのガスが自社に関連があるのか、確認します。

目標基準年の算定の場合などは、過去のどの年度の算定をするのか、を決めます。SBT申請の場合、基準年は限定されているので、留意しましょう。

3. スコープ3のカテゴリー分類

スコープ3を算定する場合、自社が関連するスコープ3のカテゴリーを調べ、また、目的に必要なカテゴリーを考慮してどのカテゴリーを算出するのか決めます。カテゴリーごとに異なる算定方法を調べ、必要なデータを集め、仕分けます。

参考;環境省 サプライチェーン排出算定の考え方 パンフレット(2017)

「サプライチェーン」と「バリューチェーン」

「サプライチェーン排出量」という言葉をよく目にしたり、聞いたりします。国内、特に環境省や経済産業省のウェブサイトや算定支援サイトなどで、スコープ1から3までの合算を「サプライチェーン排出量」と呼ぶことがあります。スコープ3が自社の事業活動だけでなく「サプライチェーン」の上流と下流を含むので、「サプライチェーン」をカバーすることになるからです。スコープ1とスコープ2だけでなく、スコープ3も含めた排出量を「サプライチェーンでの排出量」と表現することがあります。

ところが、GHGプロトコルの原本である英語版や日本語訳版では「サプライチェーン」という言葉は使われず、スコープ1から3までの合算を表す時に「バリューチェーン」という言葉が使われています。

一般的に「サプライチェーン」とはモノの供給/調達に焦点を当てた考え方で、例えば自動車業界などの製造業では、最終製品としての「車両」を構成する部品メーカーの素材調達から部品の製造、自動車メーカーでの組み立て、販売部門が顧客に販売するまでの流れを指して使われています。一定の品質を保ちながら供給網を滞りなく機能させるよう管理することを「サプライチェーン・マネジメント」とも言われます。

一方、「バリューチェーン」はもっと広く、「サプライチェーン」だけでなく、企画・設計・広告など製品に関するあらゆる活動、また顧客の手に渡った後の使用時、廃棄までを含む言葉で、「サプライチェーン」とは使い分けされています。

排出量算定の文脈では「サプライチェーン」は「バリューチェーン」という言葉と同義で使われることが多いことに留意しましょう。

参考:環境省 サプライチェーン排出量とは? 

 

参考:グリーン・バリューチェーン・プラットフォーム>Scope1、2排出量とは