カーボンプライシングとは

カーボンプライシング、炭素税、クレジット取引などのそれぞれの言葉には様々な解釈があり、解りづらいと思います。本ブログでは、環境省の「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」のアーカイブ資料に沿って、言葉の整理をしてみたいと思います。

環境省の政策を検討する組織の中に地球環境部会があり、さらにその中に「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」があります。「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」の数あるアーカイブの中で、2021年、年間を通して返し使われた資料に「カーボンプライスの全体像」というタイトルの資料があります。

それによると、「カーボンプライシングは、排出されるCO2に価格付け(プライシング)する温暖化対策の仕組みであり、市民や企業に、CO2排出のより少ない行動を合理的に選んでもらう仕組みである」とされています。そして、カーボンプライシングのパターンとして、国内では「炭素税」、「国内排出量取引」、「クレジット取引」、「インターナル・カーボンプライシング」などが挙げられています。

引用;環境省 カーボンプライシングの全体像  カーボンプライシングの全体像.pdf (env.go.jp)

つまり、CO2に誰にもわかる定量的な価値である値段をつけて、排出削減行動の選択の目安とすることがカーボンプライシングで、その手法の中に「炭素税」や「クレジット取引」などがあるということです。この章では、「炭素税」、「国内排出量取引」、「クレジット取引」について説明したいと思います。

炭素税とは

炭素税とは、CO2排出量に応じて、企業などに税金を課して排出量削減を促すのが炭素税です。国際的に炭素税(Carbon Tax)という言葉が使われています。

日本には炭素税という名称の税金はありませんが、2012年より「環境税」のひとつとして導入されている「地球温暖化対策のための税」がそれに該当するとされています。徴収された税金は省エネ対策、再生可能エネルギーの普及、化石燃料のクリーン化・効率化などエネルギー起源のCO2排出抑制の諸施策に活用されています。

「地球温暖化対策のための税」は施行以前からあった原油石炭税に上乗せされる形で課税される形で実行されています。原油石炭税は国内の化石燃料のバリューチェーンの上流にあたる採取者や輸入業者が納税義務者となっていて、その負担は化石燃料を使った商品、たとえばガソリンや灯油などを買った企業や家庭、化石燃料を使った電力を使った家庭や企業などに間接的に広く課せられています。

参考:環境省 地球温暖化対策のための税の導入  地球温暖化対策のための税の導入 | 総合環境政策 | 環境省 (env.go.jp)cas.go.jp)

2028年からは「賦課金」へ

2023年5月に発効されたGX推進法(正式名称;脱炭素成長構造への円滑な移行の推進に関する法律)では、2028年から化石燃料の輸入業者に対して、輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて、化石燃料賦課金を課すことを定めていいます。これは現在の「地球温暖化対策のための税」の対象と同じです。GX推進法は、2050年カーボンニュートラルを目指すための投資(2023年から10年間で150兆円を超える投資額)原資をどう調達するか、を定めた法律です。

税金という名目ではなく「賦課金」としていますが、税金とすると税率は国会で決めなればいけませんが、「賦課金」ならば政省令でその内容を決めることができます。「賦課金」とすることによって、政府は簡単に賦課金の割合を変えることが可能になります。2028年以降、具体的に企業や家庭の負担はどう変化していくのか、注視する必要があります。

参考:経済産業省 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案20230210004-2.pdf (meti.go.jp)

各国の炭素税

世界各国の炭素税の状況と日本を比較検討した、2018年発行の環境省の資料があります。

その資料によると、2018年3月時点で、1tCO2 当たりの税が一番高いのはスウェーデンで119ユーロ(15,130円相当)です。それに対し、日本は289円で、先進国に中でもかなり低い割合になっています。

参考:環境省 諸外国における炭素税等の導入状況

Microsoft PowerPoint - mat-4 (env.go.jp)

 

国内排出量取引とは

「GX実現に向けた基本方針」では、エネルギーの供給源として脱炭素電源利用と電気の安定供給の促進をうたっています。そのためには従来の法律を変えなければいけない必要性から、「GX脱炭素電源法(正式名称:脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法当の一部を改正する法律)」が制定されました。

地域と共生した再エネの最大限の導入促進、安全確保を大前提とした原子力の活用に向けて関連する法律を改正するのが目的としています。

具体的には、再生可能エネルギーの発電設備や送電設備などの整備を促すための法改正、初期の太陽光発電で使われたパネルが寿命を迎える時期でもあるので、その追加投資を促進するために新たな買取制度の設立などがあります。また、既存の原子力発電所の運転期間を延長できるようにするための法改正も含まれています。

これまでの法律では、原子力発電の運転期間は運転中止期間も含めて、原則40年、最長60年とされてきました。「GX脱炭素電源法」では、運転停止期間は運転期間としてカウントしなくてもよい、と改正されました。

原子力発電は再生可能エネルギーではないので、RE100のイニシアチブなどでは、除外されています。しかし、原子力発電の発電量あたりのCO2排出量は火力発電と比べると格段に低いとして、「GX実現に向けた基本方針」においても、原子力発電の量、割合共に増やしていくことを決めています。国内排出量取引とは、『企業ごとに排出量の上限を決め、「排出量」が上限を超過する企業と下回る企業との間で、「排出量」を売買する仕組み。炭素の価格は「排出量」の需要と供給によって決まる』とされています。

引用;環境省 カーボンプライシングの全体像 カーボンプライシングの全体像.pdf (env.go.jp)

具体的な例としては、2023年4月から本格的に始動した「GXリーグ」内での、GX-ETS (GX Emission Trading SystemまたはScheme)があります。現在、第1フェーズ「試行」の段階で、義務ではなく、ボランタリー(自主的な)取引となっています。2026年頃から第2フェーズ「排出量取引市場の本格稼働」への移行される予定です。

では、第1フェーズの現在、実際の取引の場として、東京証券取引所に2023年10月に開設された「カーボン・クレジット市場」があります。取引対象はJ-クレジットから始まり、徐々に扱うクレジットの種類を広げていくようです。

参考:GXリーグ GX排出量取引制度(GX-ETS)  排出量取引制度(GX-ETS) | GXリーグ公式WEBサイト (gx-league.go.jp)

参考:日本取引所グループ JPX企業情報  カーボン・クレジット市場の開設と売買開始について | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

参考:日本取引所グループ カーボン・クレジット市場  カーボン・クレジット市場 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

海外では、2005年には世界に先駆けてEU域内で排出量取引制度EU-ETS(European Union Trading System)が施行されました。対象となる産業分野は排出量が多い、発電、鉄鋼、窯業などのいくつかの分野に限っています。それぞれの施設や企業には、国または企業自ら設定した排出枠(キャップ)が設けられ、それを超えると排出枠を、排出枠を超えていない企業から余剰の排出枠を購入するキャップ&トレード方式で、ボランタリーではなく、義務化されています。EUの他、韓国、中国でも排出量取引制度が施行されています。

参考:環境省 排出量取引制度について  900422722.pdf (env.go.jp)

クレジット取引 J-クレジットとは?

日本のクレジット取引には、2013年より運営されているJ-クレジットがあります。J-クレジット制度とは、省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等によるGHGの排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度で、経済産業省、環境省、農林水産省で運営しています。

削減・吸収活動はプロジェクト単位で制度に登録し、クレジット認証されます。削減分をJ-クレジットとして確定することをJ-クレジットの創出と呼びます。創出されたJ-クレジットを購入することで、購入した企業や地方自治体の排出量に充てられ、計算上、減らすことが出来ます。

創出のための方法は予め認定されているいくつかの方法論に整合しているか、新規に方法論を申請する必要があって、申請はやや複雑です。別の章で説明したいと思います。

出典:J-クレジット制度ホームページ  Jークレジット制度とは | J-クレジット制度 (japancredit.go.jp)

カーボン・オフセットとは

J-クレジットの他にもカーボン・オフセット制度があります。カーボン・オフセットという言葉の広義の意味は、カーボンニュートラルを目指す時に、どうしても削減できないGHGの排出量を他の方法で埋め合わせるということです。

ここではJ-クレジット制度中に組み入れられているカーボン・オフセット制度のリンク先をご紹介します。

参考:J-クレジット制度 「初めてカーボン・オフセットに取り組む方へ」  初めてカーボン・オフセットに取り組む方へ | J-クレジット制度 (japancredit.go.jp)

参考:環境省 カーボン・オフセットガイドライン Ver.2.0  guideline_ver.2.0.pdf (japancredit.go.jp)

参考:J-クレジット制度事務局 カーボン・オフセット実施マニュアル offset_manual.pdf (japancredit.go.jp)

尚、2023年9月で旧オフセット・クレジット(J-VER)制度は終了しています。上記のリンクは現在有効な新制度のリンク先です。

J-クレジットの創出や、カーボン・オフセット制度の利用には、削減分や、削減効果分の定量的な数値の申請が必要なので、目的に応じたGHG排出量の計算が必要になります。